モー娘。という成長物語

writer_toro2005-06-18

まともにあいさつができない。目上の者に対する口のきき方を知らない。そんな若い子が身近にウロウロしていたところで、もはやいちいち驚かなくなった。ハズだったのだが、先般、モー娘。ことモーニング娘。の追加メンバーに選ばれた新人三人には、思わず嘆息をもらしてしまった。ついにここまで来たか…と。


三人はいずれも中学生で、若者というより子供である。友達相手のコミュニケーションしか経験がないのだろう、大人と会話を交わすこと自体ができない。呼ばれても返事さえできない。礼儀云々(うんぬん)のはるか手前の問題であろう。そして恐らくはこれが、今日における“普通”の子供たちなのだ。


五年前のデビュー当初から、モー娘。の特徴は、“普通”であることだった。際立った資質に恵まれているわけではない、そこらにいそうな“普通”の女の子。それがモー娘。の最初の印象だった。


そんな垢(あか)抜けない“普通”の子たちが、休む間もない厳しいレッスンで鍛えられ、ベソをかきながらも、徐々にプロの芸能人らしくなっていく。この様子をテレビで見たときから私は、モー娘。に興味を持つようになった。


市場に出す商品は一般に「完成品」であり、そこに至るまでの育成プロセスは、目に触れさせないのが通常だ。このプロセスをあえて公開したところに、モー娘。の面白さがある。大げさに言えば、社会的な存在価値がある。


個性の尊重とかで、自分があたかもあらかじめ特別な存在であるかのような教育を与えられた子供が、「努力」を乗り越えて「成長」を志向する動機を見いだすことは、非常に難しい。モー娘。は、そんな子供たちの心をとらえる、貴重な「努力と成長の物語」なのだ。

そして私は今、モー娘。への新たな期待を抱いている。三人の新人を、大人とまともに会話できるまでに育てられたなら、そのノウハウは、広く“普通”の子供たちにも有効なはずだからだ。(望月真理子)


【2003年02月04日 産経新聞東京朝刊2面】
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加入から2年と1ヶ月。6期の3人は、望月氏の期待を裏切らずきちんと育ったでしょうか。成長を遂げたのであれば、氏の言う「“普通”の子供たちにも有効なノウハウ」について、少し考えてみたいですね。我々はヲタだけど、責任ある大人ですから。